めぐる物語
MEGURU STORIES

MEGURUの役割──車内放置の「発見」ではなく、発見する巡回員の「支援」としたわけ

巡回「支援」システム MEGURU

弊社のMEGURUは、遊技場や大型ショッピングモール等における巡回業務を「支援」することを目的として開発したツールです。

そもそも駐車場における放置事故を防止するためには、様々な方策が考えられます。 特に昨今の優れた AI・ディープラーニングをうまく応用し、車内に取り残された子どもやペットなどを自動で検知できないか というアイディアは比較的容易に思いつくものでありますし、実際に弊社にも類似のお問い合わせ・ご相談をいただいたこともあります。人手不足が騒がれる中、ただでさえ負担が重い巡回業務を機械に自動化させたいという要望はごくごく自然なものと言えるでしょう。

それではなぜ我々は「自動検知ツール」ではなく、「巡回支援ツール」というシステムを開発するに至ったのでしょうか。 今回のコラムではその理由、背景についてご説明したいと思います。

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(AI・カメラを活用した車内放置自動検知システムのイメージ)

「AIでなんとかできないの?」に対する我々の答え

主に画像のセンシング(検知)技術を得意とする弊社では、「AIを使って車内に取り残された子どもやペットを検知できないのか」というご相談をこれまで受けることがままありました。

結論から申し上げると、 「できるケースも少なくないが、検知に失敗する特殊ケースも少なくないため、人命がかかっている状況において完全に依存することは推奨されない。」 と考えています。

駐車場ではイレギュラーなケースも多々存在

駐車場内での車内放置事故を防止することを考えた場合、なんらかの機材(定点カメラ、ドローン、巡回用ロボット等)を利用して自動車内の人物を自動で検出し、職員等に通知する、といった方法が一般的に考えられます。

下図は弊社にて車内人物検知の実証実験を行った際の画像です。

成人男性がうつむいた状態で後部座席に座っていますが、そこに人物が存在していることを正しく認識できています。

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(弊社での車内人物検知実証実験)

ただしこれはあくまで 「正面からカメラに人物が映る」という、極めて都合の良いケースを想定した場合の結果 であり、こうしたカメラによる画像認識技術を利用した検知の場合、 そもそも対象物が映らないような環境下においてはうまく力を発揮することができない ため、主に下記のようなケースの場合、うまく検知ができない可能性が極めて高いことが予想されます。

  • スモークガラスを取り付けた自動車の場合
  • 対象物(子どもやペット等)が隠れている場合(ブランケット等)
  • 悪天候や夜間等、カメラによる正常な撮影が困難な場合。

駐車場においてはこうしたイレギュラーなケースが発生することが少なくなく、そうした場合、往々にして検知に失敗する可能性が考えられます。もちろん、いくらか見落としを許容できるのであればある程度、こうした自動化案の活用も有効ではあります。他方、 車内放置事故の防止は人命がかかっているもの であり、少なくとも最初から検知が不可能な場合が想定されるのであれば、機械に検知を任せるべきではない、という結論に至らざるを得ません。

また、車内の人物検知については上記で説明した画像認識技術以外にも、赤外線センサーやWiFi電波、サーモセンサー、振動や泣き声の検知等、様々な手法が考えられますが、株式会社マルハンによる調査の結果、いずれの方法も実用化することが困難であることがわかっています。

こうした実証実験や調査の結果、現段階で我々は、人命がかかった車内放置事故防止に関して技術に完全に依存することは望ましくない、という結論に至ることになりました。

我々ができること:人による巡回業務の負担を、技術によって軽減する

前述のとおり、巡回業務それ自体について機械によって自動化することは困難ではありますが、巡回業務それ自体について実態を把握すればするほど、技術によって負担を軽減することができるのではないかと考えるようになりました。最終的に我々は、 駐車車両のナンバープレートの記録・照合をシステムで行い、確認済み車両と新規車両を区別することを通じ、巡回業務を効率化 するシステムを開発することにしました。

巡回業務の特徴と、システムによる改善方法

店舗や業態によって状況は少しずつ異なるものとは思いますが、ここでは実際に我々がシステムをご提供している店舗様の一例をもとにご説明します。

当該店舗様では、主に下記のような方法で巡回業務を行っていらっしゃいます。

  • ①開店から閉店まで、1時間毎にすべての車両を目視する巡回を実施
  • ②2度目以降の巡回では既に目視確認した車両も含まれているが、駐車台数が数百台に及ぶため、どの車両が確認済みであるかをすべて把握することは難しい。結果的に2度目以降の巡回でもほぼすべての車両をもう一度目視にて確認。

このうち②に着目し、システムの導入によって改善できそうであると考えました。 既に目視確認した車両については次回以降の巡回では確認する必要はない ため、それらを正確に記録・把握することができれば無駄が減り、負担を大幅に軽減することができる、というわけです。

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(MEGURUの動作イメージ)

MEGURUは車両のナンバープレートを認識・記録し、2度目以降の巡回で照合することで、新規の車両・確認済み車両の区別を巡回員に通知してくれるシステムです。

MEGURUを導入した場合、

  • 1度目の巡回ではこれまで通り全数を目視確認する。同時にMEGURUにナンバープレートを読み込ませ、記録する
  • 2度目以降の巡回では、MEGURUの記録を都度照合し、新規車両の場合のみ、目視による確認を行う

といった流れで巡回を行うことができるようになります。

この結果、実際に導入されている店舗からは、 2度目以降の巡回にかかる時間をおよそ半分ほどにまで減らすことができた という嬉しいご報告もいただいています。

まとめ

今回の記事では、

  • 巡回業務自体を技術によって代替することは現状難しい
  • 人間が目視確認を行うことを前提としつつ、技術によって負担を軽減することを考えた
  • その結果、MEGURUが誕生。確認済み車両と新規車両の区別を行うことで、2度目以降の巡回の負担を大幅に軽減することに成功

という経緯について、詳細にご紹介いたしました。

MEGURUを実際に利用してみたいというご相談、今回の記事では不明瞭だった点についてのお問い合わせ等、お気軽にいただければ幸いです。